インフルエンザ脳症

インフルエンザ脳症

更新日:2017年12月20日 (公開日:2015年08月24日)

インフルエンザの合併症で特に気を付ける必要があるのは、インフルエンザ脳症、インフルエンザ脳炎と呼ばれる症状です。

インフルエンザ脳症とは

インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルス感染症に伴って起こる急性脳症です。急性脳症は脳が急激にむくむことで発症します。嘔吐や血圧・呼吸の変化、意識障害やけいれんなどがみられます。インフルエンザに限らず食中毒や薬の副作用など、起こる原因は様々です。

「インフルエンザ脳症」と聞くと、インフルエンザウイルスそのものが脳に影響を及ぼしているように考えてしまいますが、実際はウイルスが脳に入り込むことはほとんどありません。インフルエンザウイルスに対し、免疫が体を守ろうと過剰に反応することで起きる機能不全が原因と考えられています。

最悪の事態は適切な対処で防げる

インフルエンザ脳症の死亡率は年々下がっています。1998年から1999年までは31%だった死亡率が、厚生労働省によるガイドラインの策定により、2001年から2002年で17%に減少しました。さらに2005年から2006年では、9.8%まで減少しています。もちろん後遺症が残ることもあるため、怖い病気であることに変わりはありません。しかしインフルエンザ脳症は、早期発見と早期対応で最悪の事態を免れることもできるのです。

発症率が高いのは5歳まで

インフルエンザ脳症は年齢によって発生率が異なります。ごくまれに大人がかかることもありますが、最も発生頻度が高いのはインフルエンザにかかった1歳から5歳までの幼児です。

インフルエンザ脳症の症状としては、意識障害やけいれん、異常行動などの重篤な精神・神経症状がみられます。この過程で全身の機能がうまく働かなくなり、血管が詰まったり臓器不全を起こしたりすると命に関わります。

原因は免疫の機能不全?

インフルエンザ脳症の原因ははっきりしていませんが、免疫系がインフルエンザウイルスによってダメージを受けてしまうことと関連があると考えられています。

インフルエンザウイルスを免疫で追い出すために、体内では多くのサイトカイン(免疫調整物質)を産生するのですが、余りにもダメージを受けるとサイトカインの産生が止まらず、免疫系の暴走状態に陥ってしまいます。

低年齢の子どもの場合は免疫が大人より弱く、よりダメージを受けやすいので、インフルエンザ脳症を引き起こしやすいのです。

後遺症の危険性

インフルエンザ脳症にかかってしまった場合、平成17年頃には急性期死亡する例が 30%、後遺症が残る例が 25%でした。研究が進んだ結果、平成21年時点では、死亡に至る致命率が 8%~9% に改善されました。

しかし、後遺症を残す子どもの率は 25%と以前から変化がありません。四肢麻痺や知的障害、てんかんなど、重い後遺症が残ります。

明らかな知的障害やてんかん発作がなくても、記憶障害や視覚認知障害(ものの形、奥行きなどを正しく知覚できない)、脱抑制(自力で感情を落ち着かせたり、我慢したりしにくい)などの高次脳機能障害が後遺症として残っていると、学校での勉強や生活になじめなくなることもあります。

医療スタッフは退院後にも定期的な知能検査やリハビリテーションなどを行い、うまく子どもが周囲の環境に適応できるように努める必要があります。